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令和5年度 経済建設常任委員会行政調査

公開日 2024年01月15日

経済建設常任委員会行政調査】

令和5年11月6日月曜日から11月8日水曜日

 

11月7日 塩尻市調査

塩尻市調査の様子.jpg

<所見>

 経済建設常任委員会は「地域の人手不足に対する取り組み」について、長野県塩尻市における「地域の雇用・就労状況、若者の地元就職・定着を促進するための取り組みなど」の行政調査を行った。

(1)はじめに
 塩尻市は、昭和34年に塩尻町、片丘村、広丘村、宗賀村及び筑摩地村の1町4村の合併により市制を施行し、続いて昭和36年に洗馬村が、平成17年に楢川村が編入合併となり、今日に至っている。
 松本盆地の南端で市内には信濃川水系の奈良井川と田川、天竜川水系の小野川が流下し、塩尻峠と善知鳥峠、鳥居峠は、太平洋と日本海への分水嶺となっており、地形は扇状地形で長野県のほぼ中央に位置している。
 人口は6万5,828人(令和5年4月)で、函館市の3割弱の規模であり、面積は、約290.18平方キロメートルで、函館市の面積677.87平方キロメートルの約43%である。
 産業面を見ると、農業は、都市近郊型の利を生かして、野菜と果樹の生産団地が形成され、レタスを中心に豊富な種類の野菜が栽培されている。また、果樹は、ブドウ、リンゴ、なし等が栽培され、ブドウを原料とするワインの醸造は、地場産業として脚光を浴びている。
 史跡をはじめ、有形・無形文化財など貴重な遺産が数多く存在しており、国指定の重要文化財等が30件、県指定12件、市指定58件がある。
 なかでも、国史跡平出遺跡からは、縄文中期から平安時代までの竪穴式住居、配石、倉庫の柱穴など290か所余に及ぶ大集落跡が発見され、出土品は隣接する平出博物館に収蔵されている。

(2)「塩尻の人事部構想」
 現在、日本国内の多くの地域企業は、人材に関する課題を抱えている状況となっている。しかし、その課題に対して、個社単位で取り組むには限界がある。また、地域の支援機関も、支援のノウハウ等が不足しており、十分な支援を行えていない状況にある。
 このような状況を受け、関東経済産業局事業では、地域が一体となった支援体制を構築するため、「地域の人事部」構想を策定し、塩尻市もその構成機関の一員として、地域の人材に関する課題を抱える企業に対して、外部人材活用や人材採用・定着支援を、学生から社会人に対してその人らしいキャリアを歩む支援を行うなどの活動をしている。

(3)「NPO法人MEGURU」
 2019年4月に「塩尻の人事部」をテーマに「はたらく」を通じて自分の人生を生きるキャリア支援と法人企業の戦略人事支援を通じ、「人と地域の持続的成長循環モデル」の実現を目指して設立された。
 主な事業概要は、下記のとおりである。
1 人事パートナー事業
 地域の中小企業の人事機能を支援、人を活かす人材戦略の立案から人事のオペレーション機能の伴走型サポートを実施。
2 マッチング事業
 前向きな成長を志す法人・個人を多様に結ぶ。正社員、複業、プロボノなどでさまざまな形態で意志ある双方をマッチング。
3 キャリア支援事業
 多様な個人のキャリア自立を支援。自らの人生を生きるための講座、ワークショップ、インターンシップなどを実施。

(4)最後に
 塩尻市では、コロナ禍以前から人手不足や採用難は課題となっていたが、アフターコロナでも顕在化しつつあり、進学と仕事をきっかけとする若者の転出が大きな要因であるため、主に地元就職やUIJターン就職を促すための各種支援事業や地元企業の認知度向上に取り組んでいる印象を受けた。
 若者の地方から都市部への人口集中は、コロナ禍の影響で緩和しているものの、現状を重要課題として捉え、ハローワークや商工会議所とも連携し、就職希望者と求人事業所が直接面談できる機会の提供に加え、市内企業における新規就職者に対し、社会人基礎スキルを身につけるためのセミナーやキャリアデザイン研修の開催など、NPO法人MEGURUとの連携した就労支援事業にも積極的に取り組んでいる。
 特に「地域の人事部」は、多様な人材の活用を推進しており、複業を考えている人材と課題を抱える企業をマッチングする「複活」や、地域の大学と連携して、学生と課題を抱える企業をマッチングし、学生ならではのアイデアでその課題を解決することを目指す「課題解決型インターンシップ」など、地域ぐるみで人材確保・育成・定着を支援する「塩尻の人事部構想」は、大変参考となる取り組みであると感じた。

 


11月8日 浜松市調査

浜松市調査の様子.jpg

<所見>

 経済建設常任委員会は調査事件である「地域の人手不足に対する取り組みについて」の参考とするため、静岡県浜松市「浜松市役所」を訪問し、雇用労政担当者から浜松市における取り組みの内容や効果・実績を伺い、その後、意見交換を行った。

(1)浜松市の概要
 浜松市は静岡県の西部に位置し、市の北部は赤石山系、東は天竜川、南は遠州灘、西は浜名湖と、四方を異なる環境に囲まれ、多様な自然が織り成す美しい風景は、数々の景勝地を生み出している。面積は1,558.06平方キロメートルで、岐阜県高山市に次いで全国の自治体で2番目の広さである。東京と大阪のほぼ中間に位置し両都市へは新幹線で約1時間半、名古屋市へは約30分で移動でき、また高速道路、航空路も整備され、理想的な地理的条件が揃っている。
 市民の中に、何事にも果敢に挑戦してみようという「やらまいか精神」が根付いており、日本有数のものづくり都市として知られ、自動車や楽器製作の世界的な企業が浜松市から誕生し、今なお拠点が置かれている。
 厚生労働省が3年に一度行なっている、政令指定都市・特別区の健康寿命の調査結果では、男性が2010年から2016年にかけて3期、女性が2010年から2019年にかけて4期、連続で1位に輝いた。さらに、日本総研が実施している政令指定都市を対象とした幸福度ランキングでは、2018年と2022年に浜松市が総合第1位を獲得した。こうしたことから、名実ともに「市民が健康で幸福に暮らせる街」をアピールポイントに掲げている。

(2)浜松市が抱える課題
 人口は2013年が812,888人、2023年11月1日現在で789,683人となっており、10年間で約23,000人の減少となっている。将来にわたって現在の状態が継続することを前提とした場合、2060年の人口は60万人を下回るとされていて、年少人口と生産年齢人口が減少することに伴う就業者の減少、地域経済の縮小や現役世代の負担増大などが懸念されており、現在、第2期浜松市やらまいか総合戦略として、合計特殊出生率を2024年に1.84、2040年では2.07を目標としているが、2021年の概数で1.37と伸び悩んでいる状態である。
 職業別の求人倍率は、建設・土木が7.51倍、警備・保安が7.32倍、福祉・介護が3.98倍、販売・営業が3.50倍と高く、運搬・清掃が0.52倍、事務的職業が0.59倍と、雇用のミスマッチが発生している。また、東京や大阪、名古屋などへの交通アクセスの良さが、かえって大都市への就職・進学を身近にしているジレンマを抱えている。

(3)課題解決に向けた取り組み
 若者の就職内定率は、高校生の内定率は99.5%、大学生は97.0%(ともに静岡県内R5.3卒)となっており、若者の地元就職・定着の促進をはじめ、潜在的人材の掘り起こしなど課題解決に向け、主に次のような取り組みを行っている。

【高校生に対する取り組み】
 市内企業への見学、複数の市内企業が共同で高校を訪問しての企業研究セミナー、マイナビが主催し商工会議所とも連携して地元企業を知る機会の創出等の他、将来的なUターン就職の促進につなげるため、進学を希望する学生のイベントに地元企業が体験ブースを設置。

【大学生に対する取り組み】
 奨学金の返還支援事業やUIJターン就職活動応援事業を通じて、経済的な負担を軽減する事業が充実している。
 また、市内企業に精通したマッチングアドバイザーを首都圏の大学等へ派遣し、学生等の市内就職をマンツーマンで伴走支援しており、効果が高い。

【女性の就労支援】
 女性が希望する業種として人気のあるオフィス事務で必要なスキルを得るための基礎講座の開催、また女性の採用に積極的な企業とのマッチングの場の提供や、現在就労していない方を対象としたサポートも手厚い。

【高齢者の就労支援】
 人生100年時代と言われる中で、高齢者が生きがいを持って、健康で楽しく活躍する社会を目指し、2019年2月6日に市、商工会議所、社会福祉協議会、シルバー人材センターの4者が「70歳現役都市・浜松」の共同宣言を行い、相談会やセミナーなど高齢者の活躍に向けさまざま取り組んでいる。

【外国人の就労支援】
 留学生と同じ出身国の社会人の先輩へ気軽に相談できる体制を整備することで心理的なケアを行なっている他、インターンシップ支援に取り組む団体へ補助金を交付したり、市内企業とのマッチング支援など、多方面からの環境整備に取り組んでいる。

【いわゆる就職氷河期世代(1993年から2004年に学卒期を迎えた方)の就労支援】
 就職相談会や企業説明会、ミスマッチを防ぐため職場実習を行い、現状より良い雇用条件や希望する職種への就職に結びつけている。

【障がいをもった方の就労支援】
 就労支援センター「ふらっと」が当事者やその家族からの相談に応じるほか、雇用する側の理解を深める取り組みも行なっている。

(4)函館市への還元
 生まれてくる子どもの数の減少、若い世代の他都市への流出を主な要因として、人口減少・地元企業の人手不足が加速していることは函館市の喫緊の課題であるが、今回の視察先の浜松市においても同様の問題を抱えていたことは意外だった。そうした中でマッチングアドバイザーの派遣をはじめ浜松市の若年層の就職に対する多様な事業政策は、函館市においても今後検討していくべき項目があり、非常に参考になった。函館市に住んでいると、大都市へのアクセスの良さはメリットであると捉えていたが、それが逆に大都市への人口流出につながってしまっていることに気付かされた。
 浜松市の取り組みの中には、既に函館市も実施している内容もあったので、そうした折角の施策・政策を、いかに広く周知し、対象となる人、必要とする人が恩恵を受けられるようにするかということも重要であると感じた。

 
 
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