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平成30年度 民生常任委員会行政調査

公開日 2018年09月26日

更新日 2021年12月14日

民生常任委員会行政調査

平成30年5月14日月曜日から5月16日水曜日

 

5月14日 松戸市調査

松戸市視察の様子.jpg

<所見>

<自主活動グループへの支援強化 松戸市通所型「元気応援くらぶ」>
 平成26年度の法改正に伴い、平成27年4月より介護予防・日常生活支援総合事業への移行に踏み切った中で、介護予防・社会参加・生活支援を融合し、実現できる住民主体の通いの場が有効であるとし、新たな介護需要の抑制やサービス事業につながることを想定し取り組まれているものだが、この「元気応援くらぶ」を開催・運営する者に補助金を交付している。
 函館市でも取り組まれている介護予防のための体操といったものにとどまらず、囲碁や将棋、カラオケなど趣味の範囲に及ぶものまで多岐にわたる活動が行われており、現在では42団体に補助金を交付し、参加者数は延べ約7万人にのぼっている。なお、補助は3年間である。
 成果
 取り組む団体を公募する際に、説明会を実施するとともに、補助決定後、研修会を開催し、団体の情報交換や協力関係を構築するネットワーク化を図ることにより、新たに団体同士の連携や協力が実現されていることがあげられている。
 また、活動を契機に、地域とのつながり、地域との協力体制が進むと声かけや見守りにつながっていることや一つの通いの場に参加すると参加者同士のコミュケーションにより、新たな社会参加の機会がふえているとされている。
 課題・問題点とその対応
 運営に際して開催場所の確保が困難であるとの意見が寄せられたそうだが、後述する元気応援キャンペーンと称して活動場所の確保に努めたとのことである。
 また、参加者の怪我や施設等の物損への不安が寄せられたことから、高齢者のボランティア活動等に対する元気応援保険を導入し、さらにその後、市民活動全体へと適用できるように範囲を広げ、市民活動総合補償制度へと発展させている。
 さらに、新たな参加者の増を図るためのパンフレット作成や高齢者専用のサブサイトを構築したのをはじめ、団体活動を充実させるための情報提供の要望や、補助終了後の団体からの継続的な財政支援の要望もあることから、後述する松戸プロジェクトで対応しているとのこと。

 函館市では、こうした「通いの場」活動については、現在のところ、地域型介護予防体操教室事業や、介護予防教室である「プラチナフィットネス」が展開されているが、体操や運動以外の活動についても種類をふやすことを検討してみるべきではないか。
 その中で、活動場所の確保が課題・問題になるとしたら、解決方法のひとつとして空き家を利活用することも考えてみたらいいのではないか。
 もちろん、その質の程度にもよるし、所有者の了解も必要だが、検討の余地はあるのではないだろうか。
 担う団体については、企業やNPO、町会など多種にわたっても良いと思われるし、行政側についても、保健福祉部の所管ではあるが、地域の資源を幅広く投入するという意味において、横の連携を図るべきだと思われる。

<企業や団体等を巻き込んだ取り組み推進 高齢者の元気応援キャンペーン>
 これは、地域全体で高齢者を支えていくための意識醸成を図り、高齢者を含め安心して暮らし続けられるような地域を目指して、個人、団体、企業等に互助としての地域貢献を再認識してもらい、できることを協力してもらうという啓発事業であるが、何かを購入する際の割引などをはじめ、いろいろなサービスが提供されている。
 効果
 それぞれのセクターが互助としての地域貢献を考える機会にもなっており、少しずつ理解が深まり始めていることや、独居の方が個人として活動場所を提供することにより、そこを利用する方とのつながりが生まれるなどの状況も見られるそうである。
 今後の課題・問題点
 ソーシャル・キャピタルを活かし、社会にインパクトを与えていくためには、単に行政ベクトルでものを考えるだけではなく、住民・地域のベクトルで進み始めることが重要であり、期間を要するものと認識しているとのことだった。

 介護予防事業に限らないが、事業の実施において、行政や当該の事業者だけでなく、地域に存在する企業や団体などにも可能な限り協力を得ることにより、広がりのある施策が可能になると考えられるため、仮に函館市でもこのような事業を行うことを検討するのであれば、長期的な展望に立って地域ぐるみで取り組むという体制を追求するべきであろう。

<都市型予防モデル「松戸プロジェクト」>
 松戸市は、第8期高齢者保健福祉計画・第7期介護保険事業計画のためのアンケート調査を行う際に、新たに一般高齢者向けの調査を他都市と比較・分析できるJAGES(日本老年学的評価研究)の「健康とくらしの調査」を導入することとした。
 かねてよりJAGESは、「健康とくらしの調査」に基づき、多面的な分析を行い、介護予防に資するリソースを見える化することで、地域の現状や課題を把握し、有効な介入施策の立案・実施・モニタリング・評価を支援してきている。
 すでに松戸市と包括連携協定を締結していた千葉大学より、JAGESの健康とくらしの調査等を活用した都市型介護予防モデルの開発のために、松戸市へ共同研究の提案があり、今後、さらに進む高齢化に積極的に対応していくために、住民主体の介護予防に資する活動を推進し、さらにその介護予防の効果について科学的根拠を千葉大学予防医学センターと共に研究するため、「松戸市と国立大学法人千葉大学予防医学センターとの介護予防に資する活動等の共同研究プロジェクトに関する協定」が平成28年11月に締結された。
 介護予防を推進すべきエビデンス(科学的根拠)として、各種調査の結果や統計によると、例えば、地域活動に参加していると介護認定率が下がる、趣味の会への参加者が多い市町村ではうつが少ない、参加組織の種類の数が多いほど要介護認定リスクは減る、地域組織に参加していない者は認知症発症が多い、などが挙げられており、社会参加の率を高めると要介護認定率が下がることをはじめ、認知症や転倒やうつのリスクが低い傾向がみられる、とされている。
 この「松戸市プロジェクト」の事業については、市民や企業向けの説明会も開催されており、住民主体の介護予防に資する活動拠点の増設の推進など7つの事業が掲げられているようだが、産学官が連携して、住民主体の介護予防活動を促進し、健康寿命の延伸を実現し、結果として介護費用の抑制を実現できるようなエビデンスをもって、標準モデル確立することを目標とされている。
 もしそのモデルに効果がみられることが明らかになれば、松戸市にとどまらず、多くの自治体でも活用できるものになることが期待されるため、今後もその動向に注目していくべきだと考えられる。

<まとめ>
 最近、政府によって、2025年には要介護認定者が現在の1.2倍程度となる見込みであることや、2040年には高齢者の増加で介護給付費が現在の2.4倍程度になると見込まれるといった試算が公表されている。
 そして給付抑制は避けられないといったメディアの論評も伝えられている。
 現状のまま推移すればということだと思われるが、将来にわたり介護サービスが本当に必要な人にとって、その質・量ともに十分なものが確保されるためということを含めて、やはり要介護認定者が増加しないことが望ましいことは論を待たない。
 そのためには、介護予防に取り組み、市民一人ひとりの健康維持、健康寿命の伸長につなげ、できるだけ介護を必要としない生活を送れるようにすることは不可欠である。
 問題・課題は、そのために何をどれだけ取り組めばいいのか、ということになるだろうか。
 今回、松戸市で高齢者の介護予防の取り組みを調査したが、昨年度の行政調査で伺った横浜市や浜松市は、若いときからの健康づくりにも力を入れる取り組みが行われていた。
 自治体によってかけられる予算や活用できる資源に違いがあるので、これに取り組むべきというような正解ははじめから存在しないのかもしれないが、地域において介護予防に活用できる資源をふやす努力をして、地域の実情に合った介護予防事業を考えていかなくてはならないだろう。
 また、松戸市は介護予防や健康づくりについて住民周知のためのパンフレットがたいへん充実していると感じた。
 私たちが提供を受けたものだけでも、「介護予防・日常生活支援総合事業」「ずっと元気でいるための短期集中予防サービス」「シニアのための元気応援ノート」「通いの場の立ち上げ・運営ガイド」などがあり、内容もわかりやすくかつ充実していると感じた。
 周知のために何でもインターネットサイトにアップされる時代だが、情報をインターネットから取ることができる人ばかりではないと思うので、こういう取り組みも重要であろう。
 昨年度に続き、介護予防について調査を行ってきたが、今後も、函館市としての介護予防の取り組みが十分なものとなり、効果をあげることができるように民生常任委員会としても議論を進めたい。

 


5月15日 目黒区調査

目黒市視察の様子.jpg

<所見>

目黒区の概況と函館市との比較
人口 目黒区:276,564人 函館市:263,101人
高齢人口 目黒区:54,842人 函館市:88,635人
高齢化率 目黒区:19.8% 函館市:33.7%
第1号被保険者数 目黒区:55,660人 函館市:88,635人
認定者数 目黒区:11,785人 函館市:19,529人
出現率※ 目黒区:21.2% 函館市:22.0%
介護保険料(基本月額) 目黒区:6,240円 函館市:6,260円
予算規模 目黒区:約197億円 函館市:約291億円
認定者1人当たり予算 目黒区:約167万円 函館市:約149万円
※ 出現率=認定者数÷第1号被保険者数

 目黒区の人口は当市とほぼ同等であるが、高齢化の進展は緩やかで、近年においては
多くの人が訪れるおしゃれな街、区内にある「自由が丘」は首都圏を対象とした各種の「住みたい街」ランキングで、常に上位に入る住宅地としても人気も高く、若い世代の人口増がみられている。
 目黒区の介護予防事業は、身近な場所で、地域の誰もが参加できる自主的な活動団体が数多く立ちあがり、介護予防の取り組みが継続的に広がっていく地域づくりを目指し、平成28年から本格的に開始されている。

事業内容
地域介護予防活動助成金
概要:会場費、講師料、消耗品費等の助成
実績:9団体に助成
効果:活動団体の円滑な運営につながっている
課題は、助成団体数の増加

〈活動の内容〉
シニア健康応援隊(めぐろ手ぬぐい体操)
 「シニア健康応援隊メンバー養成講座」の卒業生を中心に、「めぐろ手ぬぐい体操」など効果的な介護予防の取り組みを継続的に実施している。
 養成講座開催は平成26年から開始し、毎年35名程度の出席がみられる。
 実績として、平成29年度5団体、平成30年度は8団体が活動している。
リハビリテーション専門職派遣
 理学療法士、作業療法士等の専門性のある指導を行うとともに、自主活動団体が自己流になったりしないよう、内容の充実が図られている。
介護予防通信
 介護予防に特化した内容の広報誌を作成し、平成29年度は4回、計14,000部を作成配布し、介護予防知識の普及啓発で高齢者への周知や介護予防への自立を図るとされている。また、通信によって「めぐろ手ぬぐい体操」への参加・啓発にもつながっている。
介護予防のための基本チェックリスト
 チェックリストは自己チェック用で、
暮らしぶり1では、運動機能・栄養状況・お口の状態
暮らしぶり2では、外出の状況・心の健康状態
となっており、点数制で評価できるようになっている。
 平成28年度に全件郵送調査55.6%回収・平成29年度は未回答者向けに郵送し、39.0%回収。チェックリストは、日々の生活を維持していくために必要な心身の能力が衰えていないか、その傾向のありなしを判定できるようになっている。
そして判定で気になる方は、担当地区の包括支援センターに相談し、内容によっては65歳以上のシニアであれば誰もが参加できる介護予防事業(元気アップ事業等)が紹介される。
 主な教室として、
「元気アップ足腰しっかり運動教室」
「からだ元気アップ教室」(運動・栄養・口腔)
「元気アップ脳トレ教室・元気アップ脳トレ運動教室」となっている。
各種教室には、平成29年末時点で1,000人以上が参加、介護予防知識の普及啓発につながっている。
 区としては、高齢者の方々の自発的な取り組みができるよう、支援の方法を工夫していくことが大切であると考えている。

〈課題〉
・活動場所の確保(会場のバリアフリーかつ定期的に利用可能等)
・ニーズの掘り起こし(自発的に事業に参加しない高齢者のほうが、リスクが高いと推定される)
・数値目標の設定(介護予防の効果は単純には評価できない)
・自発的な取り組みの推進(区の教室参加等のみでは効果が限られる)
・その他の事業等の連携(単に介護予防にとどまらない多様性が必要。社会貢献等)
・組織体制の整備(限られた人員での事業の推進、出席者の健康管理等)

〈まとめ〉
 目黒区は、養成講座卒業生活動者の交流会やDVDの作成、研修会を行うなど、シニア健康応援隊のスキルアップを行い、活動の継続性を推進している。
 介護予防の全体評価は経過が短いことから、区としては活動者が社会性維持向上と介護予防につながっていくことを重要視している。
 また、最後に「目黒区の待機児童数は全国ワースト上位であることから、区をあげて全力で取り組んでいる」との、待機児童対策についての御発言もあった。
 調査を終えて、人口規模では当市と同等であるも、高齢化率の進展では函館市とは大きく違いがあることを実感した。
 これまで、委員会は介護予防の取り組みにつて調査研究を行ってきた。
 介護予防は、住民が主体となって行う活動を広く展開し、人と人とのつながりを通じて、参加者や通いの場が継続的に拡大していくような地域づくりを推進していくことにより「心身機能」「活動」「参加」のバランスが良くなり、結果的に要介護認定率の伸びが抑制される。
 社会保険審議会介護保険部会資料の中にもあるが、社会参加を介護予防効果についてスポーツ関係、ボランティア・趣味関係のグループ等の社会参加割合が高い地域ほど転倒や認知症やうつのリスクが低い傾向がみられる、とある。函館市民の老若男女が社会参加と人とのつながりが生涯にわたって活発に、そして大切にされていく地域社会の構築こそが介護予防へとつながっていくことを再認識することができた。
 今後も委員会としては、機会を得ながら当市の実情を踏まえて、議論を重ねていく必要性があると考える。

 

 
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