「人を大切にするまち」を目指す鳥取市を訪れた。雇用の拡大や、地元企業の発展に繋がる企業、成長が見込まれる分野の企業誘致を重点的に推進して来たまちである。 従来より、企業誘致は、鳥取市の重要課題として取り組んで来た問題ではあったが、平成23年の三洋電機とパナソニックの合併により、基幹産業であった電 機・電子産業が大きな影響を受けた為、経済再生・雇用創造に一層精力的に取り組んで来たのである。その努力が、現在の有効求人倍率1.07倍という数字に 表れ、少しずつ企業誘致等の効果が出ていると思われる。それに加え、鳥取自動車道の完成により、交通アクセスが良くなって来た事、地震等の自然災害リスク が極めて低い事、そして、市内に工場の新規立地や増設を行う企業に対して、鳥取市企業立地促進補助金や、鳥取市企業立地資金融資制度などの支援を行った事 が強みになったようである。 又、誘致後のサポートも怠らなかった。企業立地・支援課内に、専属の嘱託職員を配置し、随時、市内企業への訪問を行い、情報交換を細やかにしている。 鳥取市長は、「いつまでも暮らしたい、だれもが暮らしたくなる鳥取市」を基本理念とし、雇用を生み出し、経済を活性化する事を目標として企業誘致の実績を積み重ねて来た。 その中の「パイオニア精工株式会社」を視察した。パイオニア精工は、金型製造からスタートし、金属板金加工製品の分野においても、目覚ましい躍進を続けて いる企業である。本社は、兵庫県姫路市にあり、創立26年目の会社である。従業員数は、本社で120名、鳥取工場で80名、合計200名。15年前は、約 40名位の会社だったそうなので、目覚ましい成長を遂げている。元々、鳥取に子会社があったが、工場も古くなり、建て替えを考えていた所、鳥取市より誘致 のお話があり、支援を受け、2年前操業に至ったとの事。人材も、鳥取大学などからの紹介があるという点も要因となり、進出を決定し、現在に至っているよう だ。 その企業にとって必要な支援をし、人材確保の手助けをする。まさに「人を大切にするまち」鳥取市の企業誘致である。人口は192,122 人・・・函館に比べて77,000人も人口の少ないこのまちは、昭和18年の鳥取大地震や、昭和27年の鳥取大火など、幾度となく大災害に見舞われながら も、その都度粘り強い市民の精神力と努力により、立ち直って来た。最初に訪れた鳥取市役所職員の方々のお話からも目標と掲げた「4年間で8社以上の企業誘 致」を2年で見事にクリアし、更に8社を目指す積極性と自信が伝わって来た。 少子高齢化や人口減少など、函館市と同じ悩みを抱えて来た鳥取市 が、平成20年9月のリーマンショックを受けての有効求人倍率の低下、相次ぐ市内大手企業の撤退等に伴う大量離職者などの困難を乗り越え、4年間で、 5,000人以上の雇用の場の創造を目標に掲げて取り組み、改善して行った活動姿勢を、学びたいと思った。 鳥取市は、自然・文化・歴史などの、魅力ある資源を活用し、農林水産業や観光分野など、人・ものの流れを活発化させながら産業を振興させる事に、戦略的に取り組んでいる。 鳥取市のように、地元に根付いている産業の底上げと、まちの経済循環の活性化を図ると共に、雇用のマッチングと人材の確保や並びに育成、若い世代の人達の積極性を促して行く事が、今の函館市にも、求められているのではないだろうか。
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