【「地域連携」を軸とした経営改善で単年度黒字の達成】
「地域連携」を軸とした経営改善を図って、単年度黒字を達成した金沢市立病院を視察し、市立函館病院の経営健全化へ向けての多くの示唆をいただくことができました。事務局からは、「病院としての質の向上を図り、患者の満足度を高めることにより、最終的には経営は黒字になる」との話がありました。我が市立函館病院の経営健全化には、何が必要なのかを改めて教えていただいたように思います。
同病院では、8期続いた赤字を改善するため、単年度収支黒字化を目標にした経営改善計画に2007年度から取り組んでいます。地域の開業医の方々と連携の強化を図り、内外の声に率直に耳を傾け、病院内の環境を整備するなどソフト面での改善向上に努力しています。その結果、病床利用率が約10%も上昇し、入院患者数の増加により、収支が改善し、初年度の07年度決算で黒字の見通しとなりました。このような金沢市立病院の取り組みはかなり評価できるものであり、私たちも本当に多くのことを学ばせていただきました。
まず、感じたことはトップの姿勢が大切であり、トップの思いが病院全体を大きく動かすことができるということです。市立病院は、「地域連携型病院」をスローガンに掲げて、市内の開業医との連携強化に努めましたが、その先頭を切ったのは07年4月に着任したばかりの高田重男院長でした。同病院は、もともと市内140余りの開業医を「登録医」と名付けて提携を結んでいましたが、患者の紹介率は決して高くはありませんでした。このような現状でしたが、高田院長が中心に登録医のほとんどを訪問し、言うなれば営業をして歩かれたわけです。その際に、院長自らが改善計画を説明し、情報交換を密にし、連携を図ったということです。と同時に、それまで10床だった開放病床を20床に拡大し、かかりつけ登録医と市立病院とで協働して治療に当たる体制を確立したことも特筆されます。
また、高田院長は営業回りのほかに、率先して院内の患者を回り、患者の声に誠実に耳を傾け、院内環境の整備向上に反映されるようにして、患者からは好評を得ています。事務局の方々も異口同音に、院長が先頭に立つことによって、職員のモチベーションも向上し、より一層の経営改善につながっていると評価しています。
さらに、同病院では、全職員の接遇の改善向上に徹底して取り組んでいることは注目されます。事務局の説明では、今年度は全職員対象に外部講師により、1回2時間全5回の接遇研修を実施しているとのことです。院長を筆頭に全ての医師や看護師、各専門職員や事務職員等、例外なく受講しているとのこと。我が市立函館病院でもぜひ取り組んでもらいたいと願うものです。
金沢市立病院の視察を終えて率直に思い感じたことは、「病院の経営改善のポイントはトップのやる気とそれを支える全職員の一体感である」ということです。そして、私たちの市立函館病院には、「市民に愛され、信頼され、必要とされる病院経営」をぜひ目指していただきたいと切に願い、報告とさせていただきます。
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