京都市景観・まちづくりセンターにおいて、同センターおよび京町家の保全、再生に取り組むNPO法人京町家再生研究会から説明を受けた後、京町家の現地視察を行った。
岐阜市の事例が当市の景観形成にとって参考となる事例であるのに対し、京都市の事例は歴史的建造物の保存のために参考となる事例である。
まず、歴史的建造物の指定範囲であるが、指定は地区における限定ではなく、所在地は広範囲に及ぶ。その点において、函館市における明治・大正期に礎を築いた 建造物は当時の地勢柄、西部地区に生活文化圏が集中していたため、歴史的建造物が存在する場所も西部地区に集中しているのが必然であることから、京都市の 事例になぞらえる必要は無いものととらえる。
別の側面からの考察として、京都市では、歴史的建造物を保存する目的として、行政による積極的な財政支援がうかがえる。また、まちづくりに関わる事項を設立主旨としたNPOによる支援も浸透している。
当市との差はここにあると思われる。当市においては、伝統的建造物や景観形成指定建築物に指定された建物の所有者が、建物をその状態のまま保存し続けることが経済面または活用面で困難になり、指定解除を申し出る事例が増えている。そしてその結果、歴史の名残を称える建物が解体され、まちの雰囲気を創り上げて いる大切なパーツを損失している実態にある。
その点において、京都市の取り組みは、保存のためだけではなく、活用方法を含む、行政やNPOを介した提案と支援により、所有者または管理者の経済的な無理が生じづらく、かつ有効的な活用に市民からもその存在価値が広く認められている。
建物を使用している管理者が管理している建物が歴史的建造物であるということに誇りを持っているという現実も目を見張るものであり、まちづくりセンターの方が「建物は個人の物でも景観は公共の物」と話された言葉も、感覚として広く浸透しているようだ。
行 政とNPOの支援が建造物の所有者または管理者の負担を軽減し、長く、しかも有効的な活用が実現し、広くその存在価値が認められていることにより、保存および活用のための予算付けの強い根拠となる。この好循環に、歴史と景観を守る市民の自負が乗り、より一層伝統的建造物保存への理解や意識が深まっている。
当市においても、具体的数値ではなく、システムの起動として京都市の取り組みや取り組みによる影響を例とし、行政、市民、事業者が一体となった継続性のある好循環を生み出すことを目的とした細部にわたる検討を行う必要があると考える。
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