長野市は日本地図の真ん中に位置する長野盆地の緑豊かな山々に囲まれた場所に位置している。明治4年に長野県になり、長野市は明治30年に市制を施行した。 明治・大正・昭和・平成と近郊地域と合併を繰り返し、平成22年1月では面積834平方キロメートルで人口は約39万人となった。長野駅前から1.8キロメートルの所に善光寺があり、門前町として現在も市街地側が善光寺口として栄えている。人口は減少傾向で高齢化も進展している中で市街地の拡大と中心市街 地の空洞化が進み自動車利用に適した都市形成が進行している。市内を縦断する幹線道路は交通量も多く混雑し、公共交通から自動車へのシフトが一気に進み公共交通への依存率も下がり、バス利用では高齢者が約2割で運転免許を持たない高齢者にとってバスは必要不可欠なものとなっている。
市内のバス会社は川中島バスと長電バスの2社である。利用者はここ30年で約30%に減少している。利用者減少、サービス低下、さらなる利用の低下と悪循環している。
長野駅を中心としたバスネットワークを形成しているが、交通弱者対策、とりわけ不便なのが、面積の7割を占める中山間地域で、ここではバスのほか乗合タクシーなど地域の特性に応じた移動手段を導入している。
長野市のバスに関する各種施策として、生活路線バス以外の乗合バスとしてコミュニティバスや乗合タクシーを運行している。市営バスはあるが、利用者数は減少 し採算性が厳しい状態である。路線バスの廃止によりスクールバスでの対応が増加しており、少子化による利用者は減少しても遠距離通学助成費は大きくは減少しておらず、福祉移送サービスの利用件数は増加傾向にある。
平成19年に施行された公共交通活性化法にのっとた長野市地域公共交通総連携計画に平成20年から取り組み、22年に循環バスの実証運行をはじめた。既存の路線バス、中心市街地活性化としての市街地交通の円滑化、そして高齢者の交通手段確保のためのコミュニティバス、乗合バス、乗合タクシーなど地域の要望に合う交通活性化、実証運行を経て本格運行を進めている。
乗合タクシーは乗合バスより低価格で費用を圧縮できるので、行政サイドは助かるが、タクシー業者からは苦しいという話は聞いている。
バ スのICカード化については、カードの管理及び運営を長野市公共交通活性化・再生協議会(以下「協議会」という。」)が行い、バス会社はバスの運営のみ行 い、バス会社の負担を省いている。実際の運行には、協議会が利用者の希望の日時、利用区間などを記録したメモリーをバス車載のナビに差し込み、行路や時間な どが表示された映像に基づきドライバーが運転している。営業や経理、宣伝、教宣活動も協議会が中心に行い、カードへの入金の練習や子どもには公共交通を知ってもらうための教育も行い、初期のトラブルはあったにせよ、現在は当たり前に利用されている。
PTPS(公共車両優先システム)は、大量公共交通機関であるバス等の運行を円滑に行わせ、バス等の定時運行を確保するとともに利用を促進して、道路の利用効率を向上させる施策である。バスレーンなどのような交通規制施策と交通信号機など交通インフラを制御するシステムを合わせたものであるが、警察と連携しなければ実現できず、その警察がシステム導入に前向きでないため、着手・検討に至っていない。
コミュニティバス等の運営は自治体が行うほうが過疎債や合併特例債等の財源を利用できる長所がある。朝夕の通学時はスクールバスとして主に子どもたちが利用し、閑散となる日中帯は高齢者が利用する運用としている。
乗合タクシーの料金は70歳以上100円で地域によって異なり200円の地域もある。利用者については、地区によって状況が違うが、1日当たり10人、多いところで40人くらいで普通車、ジャンボタクシーの予約によるドア・ツー・ドアで運行している地域が多い。(小型バスからジャンボタクシーに変更した地区 もある。)運行業者については、補助金を交付する方式のため、入札はできないが、タクシー協会の協力の下、見積書を提出してもらい、価格の一番安いところと契約している。タクシー車両は昼間はそんなに忙しくないため、儲けは少ないが、効率的に車両を使用できる。
小・中学校のスクールバスは小学校4キロメートル以上、中学校6キロメートル以上、学校から離れていると教育委員会は移動手段を確保しなければならない、財源は国から手当されるらしい。
70 歳以上の高齢者のお出かけを支える「おでかけパスポート」は路線バス、循環バス、乗合タクシーが利用でき、対象となる高齢者数は5万5,000人と発行枚 数は多いが、実際の申込みは約4万人で、利用上限はない。距離が遠いところだと1,500円かかっていたのが、100円になった。
長野市は 駅周辺に行政機関も集中し東西南北の放射線状に開発が進められた。買い物や医療サービスなどの施設も中心地にあり、中心地から遠くなるにつけ、範囲は広く なり、交通網は薄くなり公共交通の便は悪くなる。何らかにより自家用車等の移動手段を確保できる住民はいいが、そうでない方は高額な交通費を拠出しなければならない。
函館市はその円を縦と横に4等分したような地形である。扇の要が中心地で先に行くほど公共交通網は薄くなる。また、東部地区の海岸沿いの南茅部、椴法華、恵山、戸井地区に暮らす住民の公共交通をどう確保するか、または保証するかも市の課題である。コミュニティバス、乗合バス・タクシー、スクールバス等、本市の現状に沿う取り組みを早急に進めなければならない。
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