通説編第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ


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第2章 開拓使の設置と函館の町政
第3節 町政の展開
4 市民の税負担

開拓便設置後の税負担

町内入費

区入費

函館の区入費

小区割区入費

地方税と協議費

函館区内協議費

開拓使設置後の税負担   P337

 開拓使が設置されても函館市民の税負担には変化はなかった。旧幕以来引き続いた主な税目をあげると、海産税(明治2年9月に場所請負人が廃止され、請負人納付の運上金が漁民直納の海産税となる)、沖ノ口諸税(明治3年海関税と改称)、地租(箱館地子永)、諸税(店役、家役、四半敷など正租以外の小物成とよばれていたもの)がある。このうち函館町会所が収納の窓口と思われる地租と諸税の1か年分について、明治3年の分が内訳け付きで残されていたので表2−32に整理しておく。
表2−32 明治3年箱館市中御収納井沽券金地子永表
◎御収納
収納科目
金額
内訳
備考
店役銭・家役銭・四半敷役 161両 永187.5文    
質屋冥加金 30 1軒に付金5両 6軒 休株 2軒
髪結冥加金 16 1軒に付金1両16軒 休株 6軒
築島冥加金 11    
風呂屋冥加金 27 1軒に付金3両 9軒 休株 4軒
清酒冥加金 96 100石に付金10両 12軒 高 960石
濁酒冥加金 56   350 100石に付金7両 32軒 高 805石
醤油冥加金 8   100 100石に付金3両 3軒 高 270石
糀冥加金 13   650 100石に付金7両 13軒 高 195石
芝居冥加金 200    
山上町遊女屋冥加金 250 1軒に付金10両 25軒  
山上町引手茶屋冥加金 105 1軒に付金5両 21軒  
山上町見番冥加金 500    
東築島町遊女屋冥加金 250    
東築島町見番冥加金 200 1軒に付金10両 25軒  
合計 1,924 287.5    
◎建家拝借地冥加永
冥加永金額
内2割増分
坪数
単価
27,668.1文
26,269.9
22,674.7
計76,612.7
4,611.3文
4,378.3
3,779.1
12,768.7
4,611.351坪
7,297.2
9,447.8
21,356.351
600文
360
240

◎畑地拝借地冥加永
冥加永金額
内2割増分
坪数
単価
1,586.4文
17,079.7
計18,666.1
264.4文
2,846.6
3,111
2,644坪
47,443.65
50,087.65
60文
36

◎東築島町建家拝借地冥加永
冥加永金額
坪数
単価
90貫440文
944.4坪
10貫文
◎地子永
地子永金額
坪数
単価
34,146.8文
74,962.3
53,252.1
計165,361.2
7,429.36坪
24,987.443
26,626.04
59,042.843
500文
300
200

◎亀田出町地子永
地子永金額
坪数
単価
102,511.2文
4,935.5
計125,446.7
24,102.25坪
9,871
33,973.25
500文
50

◎沽券金(明治2年願済分)
沽券金額
坪数
単価
266両3分永105文
内133両 永427.5
内133両 永427.5
5,337.1坪 金5両

海産税・海関税   P337−P338

 海産税、海関税は海関所(沖ノ口を明治2年10月に海官所と改称、翌3年12月更に海関所と改める)が収税を所管した税である。特に海産税は北海道の正租といえるもので、北海道における収税の大半を占めている。また海関税は、箱館戦争被害の復興が思うにまかせないとの伺書(「開日」)を受けて出され明治4年12月27日の太政官布告で、「人民物産繁殖、土地潤沢ノ為」ということで、明治5年から7年までの3年間課税が免除されている。しかしこの期間も港の維持に係る経費負担として港役(明治6年1月碇泊税となる)、船税は徴収された。その後海関税免除期間が終了したとき、政府はすでに港湾等での収税金徴収廃止を決めていたため、開拓使は開拓途上にある北海道は他府県と同様の税則を行うことは難しく、本来民費負担である費用も官費負担となっている費目も多いことを理由に、北海道産物原価の100分の4を出港時に徴収する出港税の創設を政府に申請(明治8年2月施行)、海関税に代えた。その目的は「全道堤防道路ノ修築又ハ賑給等専ラ人民興益ノ用ニ充ツヘキ為」ということで、この時海関所を船改所と改称した。

地租   P339

 函館地子永と呼ばれた地租は、沽券地という私有宅地に課せられた税であるが、「維新前町村制度考」(『函館市史』史料2)によれば「安政四(一八五七)年初テ其制ヲ立ツ」とあって、幕末期に徴収が開始されたもののようである。また、同書は沽券地についても、函館では昔から住居する土地は自然に私有地となっており、先祖代々の地には沽券状はなく、税の徴収が開始された頃から官地払下げや先祖代々の地売買に際して官に願受書[永代沽券地願]を提出し、私有地の証[沽券状]が作成される体制となり、願受書には地子永を納める旨の記述があり、町代が連印し、名主町年寄が奥書したと述べている。
 この地子永が開拓使設置後地税と改称され、明治5年函館市街地に地券が発行されると地券税(8年からは市街地券税)と改められ、地券金の100分の2としたが、翌6年7月には前年にさかのぼって1000分の8と改められた。その後9年12月に全道の地租が一定とされ、地価の100分の1となった。また沽券地以外の官からの拝借地には、先に掲げた表の如く拝借地冥加永が課せられたが、その後については明治5年1月に拝借地税を税外収入に編入する(『開事』5)とある以外不明である。

雑税   P339−P340

 次に雑税であるが、函館市民全体にかかる税として上げられるものは、店役、家役、四半敷役(薪役でのち銭納)、人別銭の4種である。4種とも幕府前直轄期の享和年間に創設されたといわれる税で、人別銭が分頭税である以外は、店の大小、家の大小、貧富の差など見聞割で税額が決定された税である。店役家役は町会所が税額決定通知兼徴収切符をもって徴収し、四半敷役人別銭は、宗門人別下調帳に記載して徴収したものである。店役家役人別銭の3種は3年10月に廃止され、家役は同5年1月廃止されている。なお、人別銭については、「維新前町村制度考」では分頭銭12文とあり、廃止時期不明とされているが、東久世長官「日録」の3年10月3日の項に、「町内人別銭相廃候事農政掛より申付、一人前一年廿四文」とある。「維新前町村制度考」では一般の税として説明されているが、先に掲げた明治3年の収税には漏れており、次に説明する町内入費として捕らえられていたのかも知れない。
 先の4種の雑税以外の雑税は、営業雑種税といえるもので、職種毎に税目が立てられている状態であった。『開拓使事業報告』(第5編租税)に、箱館戦争による戦禍救済ということで賦課免除となった税目と徴収が継続された税目が載っている。運上金が変質した海産税や函館地子永なども含まれ、すべての雑税目が挙げられているわけではないが、函館での現状を反映したものと思われるので次に掲げておく。

明治2年は免税となった税目……田畑貢納(8年に地租と改称)、拝借地、茅場、秣場、温泉場、質店、風呂屋、髪結床、炭竃、網、牛馬、差荷役、伐木、海産の諸税
明治2年も徴収された税目……函館地子永、売下地価(沽券金のことか)、酒類醤油麹醸造、引手茶屋、遊女屋、見番、芝居、蚕種紙の諸税

 政府が税制の見直しを進めるに当たって雑税は整理廃止の方向で取り組んでいたこともあって、開拓使もまず3年10月に箱館府から引き継いだ税目の検討がなされ、次いで5年に地券発行という改革に伴う雑税の整理、さらに9年に同8年の太政官布告第23号の廃税目を受けてと、3度の雑税の整理が行われた。各年に廃止となった税目は次の通りである。

明治3年閏10月廃止の税……豆腐役、五十集役、差荷役、合船役(造船税)、人別銭、店役、四半敷役
明治5〜6年にかけて廃止の税……職人税、卯時役、南蛮売役、南蛮小役、郷宿冥加、寄留商人免許税、吹抜庫税、陶器焼継税、糴種商税、諸種商税、差網鯡漁船小役、建網鯡漁小役、鯡漁建網釜薪税、引手茶屋税、遊女屋税、見番税、家役
明治9年(8年分から適用)廃止の税……伐木税、炭竃税、茅場税、秣場税、温泉場税(借地料に改める)、鯨税、醤油味噌酢税、建網税、硫黄税、網干場税、質店税、髪結床税、寄興行税

庁費金   P341

 またこれら雑税に入るのか、次に述べる町内入費の枠に入るのかはっきりしないものとして庁費金というのがある。庁費金は、5年函館市中では地券が発行されるようになったとき徴収が始まったもので、地租の3パーセント、つまり地租1円に付3銭を徴収、函館支庁の内部経費の一部としたもののようである。12年7月郡区町村編制法が導入されるまでその徴収は続いた。

国税・地方税   P341

 明治10年5月、政府が8年9月太政官布告第140号で諸税を国税府県税に整理されたのを受けて国税・地方税の区分を定め、8年から適用することとした。国税目・地方税目は次の通りである。

国税目 地租 市街地券税 地券証印税 海産税 銃猟税(職猟・遊猟) 船税(蒸気船・西洋形風帆船・50石以上日本形船・50石未満艀漁船並海川小廻船) 清酒税(営業税・鑑札再度手数料・鑑札引換手数料・鑑札申受15日以内廃業手数料・醸造税[但味醂焼酎白酒銘酒も右に準ず]) 酒類受売営業税(営業税・鑑札再度手数料・鑑札引換手数料) 牛馬売買免許鑑札税 車税 度量衡税 蚕種印紙税 証券税(印紙税・界紙税) 煙草印紙税 訴訟並文通罫紙税 官録税 家録税 賞典録税
地方税目 氷専売税 鹿猟税 網税 劇場税 貸座敷税 芸妓税 娼妓税 芸娼妓鑑札手数料 怠納金

 なお、出港税については「出港税処分ハ従前ノ通」との但書が付けられ、北海道産物出港税として、独立別項目の国税として位置付けられていた。
 函館については、11年7月から同12年6月までの1か年分の収納額が確認できたので、表2−33として掲げておく。
表2−33
明治11年度函館区中国税地方税収納額表
税目
金額

国税
 市街地券税
 地券証印税
 三印紙税
 度量衡税
地方税
 諸営業税
 三業税
 合計

11,631.836
7,593.229
118.285
3,902.755
17.567
8,405.649
4,857.649
3,548.000
20,037.485
「郡区改正書類」より作成
注 三印紙税とは、蚕種印紙税・証券税・煙草印紙税のことであり、三業税は、貸座敷税・芸妓税・娼妓税・芸娼妓鑑札手数料の総称である。
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