通説編第1巻 第3編 古代・中世・近世


「函館市史」トップ(総目次)

第2章 松前藩政下の箱館
第4節 宝暦・天明期の流通構造
2 長崎俵物

銅代物替/俵物移出の始まり

俵物指定問屋

茅部漁民の訴え

俵物集荷状況

幕府の蝦夷地調査

俵物集荷状況   P376−P379

表1 松前煎海鼠の買入れ状態(延享元年)
場所
目方
買入銭高
1斤の買入高
松前
(貫)(匁)
4,844.159
(貫)(匁)
4,731.417
(文)
155
同囲置き
674.62
686.212
162.5
江差
1,268.900
1213.319
153
箱館
789.710
751.557
153
合計
7,577.389
7,382.505
 
注1.近松文三郎「松前煎海鼠」により作成
 2.この買入銭高以外に諸掛り物高(合計)437貫157文を必要とした
 すなわち、ここに箱館港における俵物の集荷状況をみると、延享元年には表1の通りである。
 これは煎海鼠の買入状況で、総量7,577貫余の内、松前は4,844貫余で最も多く、次いで江差が1,268貫余、箱館は789貫余の順で、3港のうちで箱館が最も少なかった。このことは当時松前地での集荷権を両浜組が握っていたことと、箱館近郷の生産高が低いばかりでなく、これを取扱う商人もまた少なかったことによる。
 しかるにこれが延享5年(1748)には、箱館にもすでに問屋株仲間も生れ、あるいは、これまで松前の近江商人によって占められていた場所請負人も、はっきりした年代はわからないが、前述のように箱館に根拠をおく請負人もようやく現われてくると、おそらく俵物を引当てとして、噴火湾沿岸から日高三石など、昆布場をもって知られる場所をそれぞれ請負うようになった。
 ことに天明5(1785)年幕府が、長崎の俵物会所を改めて俵物役所とし、箱館に会所を設け、これまでの一手請方問屋を廃止して直仕入制をとると、箱館は、北国筋の俵物集荷拠点となり、毎年江戸から普請役・請払役などが出張して、北国筋俵物の統制と買入れを行うようになった(小川国次『江戸幕府輸出海産物の研究』)。
 そのため天明8年以降の3港における買入状況は、表2の通りで、天明8年には箱館3,546両、松前蝦夷地廻り3,458両、江差300両と、箱館と松前の買入高はほぼ同額となって、箱館の買入高が延享年代に比較して非常に上昇し、江差はこの両地に比べると10分の1にも達していない。しかも寛政2(1790)年および同3年の買入高では、箱館が5,250両・9,827両、松前3,189両・2,246両、江差は1,350両・1,100両と、箱館が大幅に増大して3港のトップになるとともに、松前・江差は減少の傾向を示していることは、とりもなおさず天明5年以降、箱館を中心とした幕府の俵物直仕入制の採用によるものである。そしてこのことは同時に幕府による蝦夷地支配への道を切開くものであった。
表2 北国筋俵物買入代金と俵物荷物寄
  
天明8年
寛政2年
寛政3年
両.(永文)
備考
両.(永文)
備考
両.(永文)
備考
買入代金合計
8,948.0(196)
 
14,880.2(14)
 
17,438.0(44)
 
箱館俵物買入代
3,546.0
 
5250.0
 
9,827.3(116)
 
江差俵物買入代
300.0
 
1350.0
 
1100
 
南部俵物昆布買入代
500.0
 
2200.0
田名部・宮古・八戸
2150
田名部・宮古・八戸 (津軽)
領主へ運上金
 
 
2000.0
 
 
 
俵物運賃・雑費
 
 
250.0
 
282.2(133)
 
松前蝦夷地廻煎海鼠買入代
3,313.3(148)
79,771斤
3,006.0(126)
72,147斤
2,063.3(34)
49,530斤
諸掛り物
233.1(68)
 
211.2(11)
 
145.0(207)
 
  役口銭
99.1(167)
1,000両に付き30両
90.0(184)
天明8年と同じ
61.3(163)
天明8年と同じ
  問屋口銭
82.3(98)
〃25両
75.0(153)
  〃
51.2(95)
  〃
  荷造り賃
35.0(99)
1丸に付き永55文
31.2(245)
  〃
21.3(43)
  〃
  蔵敷賃
15.3(204)
〃25両
14.1(179)
  〃
9.3(156)
  〃
松前蝦夷地廻り干鮑買入代
145.0(99)
5,803斤
183.2(244)
7,786斤
183.0(78)
7,772斤
藷掛り物
11.2(195)
 
15.0(90)
 
15.0(90)
 
  役口銭
4.1(103)
1,000両に付き30両
5.2(12)
天明8年と同じ
5.2(18)
天明8年と同じ
  問屋口銭
3.2(127)
〃25両
4.2(94)
  〃
4.2(98)
  〃
  荷造り賃
2.2(54)
1丸に付き永55文
3.1(176)
  〃
3.1(170)
  〃
  蔵敷賃
1.0(161)
〃25両
1.2(58)
  〃
1.2(54)
  〃
残金
898.0(186)
 
414.0(44)
 
1,670.1(136)
 
俵物荷物寄
同左
同左
品目
数量
備考
数量
備考
数量
備考
松前煎海鼠
12,738斤
前年囲置分
7,417斤
天明8年と同じ
26,397斤
天明8年と同じ
  〃
79,771〃
年買入分
72,147〃
  〃
49,530〃
  〃
  〃
43,153〃
本年送り分
53,167〃
  〃
74,772〃
  〃
  〃
49,356〃
本年残分
26.397〃
  〃
1,155〃
  〃
松前干鮑
8,036斤
前年囲置分
2,857斤
天明8年と同じ
2,161斤
天明8年と同じ
  〃
5,803〃
本年買入分
7,786〃
  〃
7,772〃
  〃
  〃
9,286〃
本年送り分
8.482〃
  〃
9,411〃
  〃
  〃
4,553〃
本年残分
2,161〃
  〃
522〃
  〃
注 「松前蝦夷地廻俵物買入代金請払勘定帳」(飛騨屋家文書)により作成
「函館市史」トップ(総目次) | 通説編第1巻第3編目次 | 前へ | 次へ