通説編第1巻 第1編 風土と自然


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第4章 気象
第2節 函館の気候
2 四季の気侯

春/夏/秋/冬

 

春   P95−P96

 2月下旬になると、そろそろ春に近い気配が感ぜられ、融雪が始まり、3月中旬にはすでに平均気温は零度(以下度は摂氏)を越えるようになり、積雪もほとんどなく、北海道の北部や内陸の地域よりは、ひと足早く春めいてくる。
 3月には、時として日本海で低気圧が発達して当地に近づくことがあり、猛烈な春のあらしになり、前節 3 に述べた函館大火の際の測器被害や、本節、次節で後述するように大火発生の要因ともなる。このあと低気圧の後面に入って、一時北西の季節風の吹き返しなどの見られることもあるが、3月の半ばを過ぎれば、そろそろ大陸高気圧は衰えを見せ、北西の季節風は目立って弱まってくる。しかし、一方では北太平洋高気圧の発達までにはまだ間があるので、この隙(すき)間を埋めるように4月から5月のころは、華中方面から移動性高気圧が東進して来て、乾燥した空気が当地方をおおうようになる。
 このころはまた、黒龍江流域から樺太付近を通る低気圧や日本海を北上する低気圧がしばしば現われ、気圧配置としては南高北低型となって、これらの低気圧に向かって南寄りの乾燥した空気が流れ込むことになる。この南寄りの風は何日も連吹することがあり、それも天気のよい日に多く、函館ではかつて″馬糞風″と呼ばれた。当時市内の貨物運搬手段の主力は馬車であり、路上に排せつされた馬糞が乾燥してほこりと共に舞い上がるのでこう呼ばれ、春の風物詩の一つでもあった。
 6月になるとオホーツク海に高気圧が停滞することが多くなり、本州本面では梅雨期に入るが、当地方は、梅雨前線のはるか北側となるので、ほとんど雨はない。しかし、オホーツク海高気圧から吹き出す風は、北海道東方沖の低温多湿の空気を北東の風として当地に送り込んで来るので気温は低く、厚く低い霧雲が立ちこめた、じめじめした暗い天気が何日も何日も続くことがあり、夏を目の前にして憂うつな時期となることがある。この6月の状況は年によって様子が違い、時として7月のはじめまでも持続して夏の到来を遅くすることがあり、農作物に大きな影響を与え、冷害・凶作と騒がれることがある。
 このように函館の春は、3月から6月にかけて約4か月の長い期間にわたる。

夏   P96−P97

 北太平洋高気圧が発達して夏型の気圧配置となり、函館もその勢力の中に入るようになるといよいよ本格的な夏が到来し、これとともに南東季節風の最盛期となる。南東の季節風は北太平洋の湿った暖かい空気を運んでくるので、時として東北や北海道のこの近海で発生した海霧をも共に運んできて、海岸から市街地にかけてすっぽりと霧に包んでしまうこともある。しかし、その程度は、道東部の根釧地方や道南部の勇払地方のそれとは、比較にならないほど規模の小さなものである。
 このころはまた、本州の梅雨期の末期の豪雨と同じように、7月、8月に北上してきた梅南前線の名残りが当地方にひっかかると豪雨が降りやすくなる時期でもある。
 一方、この時期にはそろそろ最盛期となった台風のうちのあるものが、一時は朝鮮半島方面に向い、衰弱して弱い低気圧となって注意をそらされていたものが、日本海をこの梅雨前線に沿って東進して来ることがあり、″腐っても鯛(たい)″といわれるこのような″台風くずれ″によって大雨に見舞われることがあり、油断の出来ない時期でもある。
 函館の夏は短かく、8月下旬になるとそろそろ秋の気配を感ずるので、夏の期間は7月・8月の2か月間で終ってしまう。年間の最高気温は7月下旬から8月中旬にそのほとんどが見られるが、日中最高気温が30度を越す日は年に1回前後、25度以上の日は30日前後が普通なので、北海道の内陸に比べるとはるかに涼しい夏といえる。

秋   P97−P98

 9月にはいると北太平洋の高気圧は次第に衰え、大陸の高気圧が徐々に強まり始める。また、この間に移動性高気圧と低気圧が交互に本邦を通過し、低気圧に伴った寒冷前線の後には、乾燥した冷涼な秋風が送り込まれてくる。
 9月から10月始めにかけては、しばしば日本海を急速に北上して来る台風があって、天気の急変が懸念されることが多い。これらの台風のうち、奥羽地方を横断して太平洋へ抜けるものは函館付近に大雨をもたらすことが多く、また北海道西岸沿いに北上するものは強い南風の暴風となって、函館としては最悪の気象状況となる。昭和29年の洞爺丸台風は、この代表的なものとして知られている。
 秋が深まり、10月ともなると晴天日数は1年を通じて最も多く、気温も降下して、北海道らしい清涼な天候となり、秋の澄んだ爽(そう)快な空が見られることが多い。
 初霜は室蘭、浦河などよりやや早く、10月中旬に見られ、10月の末には初氷も張り、近くの横津岳に初冠雪も見られるが、初雪は11月に入ってからのことが多く、北海道としてはいずれも遅い方である。

冬   P98−P99

 11月上旬、そろそろ初雪があって北海道は長い冬に入るが、函館の11月前半はまだ秋の色が濃く、時折り暖かい日和を楽しめることが多くあって、冬とはいえないかもしれない。
 しかし、11月後半になると、時として本格的な冬を思わせるような降雪に見舞われることもあるが、積雪としては多くなることはない。このあと2月いっぱいまでは北西季節風の最盛期となり、本格的冬の季節となる。だが、この北西季節風は連日吹きすさぶわけではなく、大体5日ないし10日くらいの周期で強弱を繰り返すのが普通である。すなわち、北西の季節風が衰えて比較的穏やかになったと思うと、間もなく日本海に低気圧が現れて本道に接近し、気温は上昇してくる。
 低気圧が通過するまでは降雪があり、普通は風はさほどの強まりをみせないが、寒冷前線の通過とともに北西の季節風に乗って寒波が押し寄せ、これとともに気温は急降し、風は一段と強まって吹雪となり、これが数日間続くのが常である。
 風は10から15メートルに達するのは珍しいことではなく、ことに大陸の高気圧が優勢で、低気圧の発達も急激なときは15メートルから20メートルを超えることもある。
 もっとも、函館では北西の季節風に対して渡島半島を南北に縦断する山系がこれを阻害しているので、表日本のような天候を示すこともあり、雪日数も積雪の量も少なく、12月に入ってからも、雪が積っては解け、積っては解けを繰返し、時として1月になっても地面の現われていることもあるほどである。
 積雪の最深は1月から2月にかけて多く見られ、30ないし40センチメートル位である。
 気温の最低は12月から1月に見られることが多いが、氷点下15度より降下することは少なく、冬期間のうち、1日の最高気温が零度に達しない日、いわゆる真冬日は平均して40日前後となっている。
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