| 通説編第1巻 第1編 風土と自然 |
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第3草 生物の分布 2つの地域/函館山
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2つの地域 P66 函館市および周辺の森林地帯は、南西部に孤立している函館山と、北東部に山裾(すそ)を広げている亀田山脈南西斜面とが市街地によって隔離されているので、両地域に分けてそれぞれ考察する。 函館山 P66−P69 函館山は標高333.8メートル、周囲約9.5キロメートル、津軽海峡に突き出た孤山である。海峡に面する南西部には溶岩台地が広がり、裾は急峻(しゅん)な断崖(がい)となって海に迫っている。市街地に面する北東部はやや緩斜面で、浸食の進んだ幾つかの深い谷に刻まれながらも豊かな森林に恵まれている。市の郊外から亀田山脈山麓(ろく)にかけての地帯は早くから開拓が進み、自然植生のほとんどが失われているのに比べ、函館山は軍の要塞として過去半世紀にわたって一般人の立ち入りが禁止されていたため、自然状態は比較的良好に保持されてきた。従って、都会地に隣接した狭い地域でありながら、現存する植物は103科、356属、618種、29変種、4品種の多きに及んでいる。その中には、分布の北限とされるもの6種、南限とされるもの7種、固有種8種も含まれている。また、未解決の要素も含まれており、特にエンレイソウ属、シダ類、蘚苔(せんたい)類などについては今後の検討に待つべき問題が多い。●高木層 千畳敷南西部にはイタヤカエデ、カシワなどの、風衝型ながら、生態的に重視すべき原生林を残しているが、樹種に富むのは北東斜面である。森林を構成する高木は、針葉樹としてはイチイとヒメコマツがわずかに点在するのみで、他はすべて落葉広葉樹である。その主なるものは、 イチイ、ヒメコマツ、ドロノキ、カラフトヤナギ、オニグルミ、ミヤマハンノキ、ヤマハンノキ、ヒメヤシャブシ、エゾノダケカンバ、ダケカンバ、シラカンバ、サワシバ、クリ、ブナ、カシワ、ミズナラ、ハルニレ、コブニレ、オヒョウニレ、ヤマグワ、キタコブシ、ホオノキ、ウワミズザクラ、エゾノウワミズザクラ、ミヤマザクラ、エゾヤマザクラ、ナナカマド、オクエゾナシ、アズキナシ、カマツカ、イヌエンジュ、キハダ、ニガキ、ヤマウルシ、ヒロハツリバナ、オオバマユミ、ハウチワカエデ、イタヤカエデ、ヤマモミジ、トチノキ、シナノキ、モイワボダイジュ、ハリギリ、ミズキ、アオタモ、ハクウンボク などの約46種が数えられる。また、スギは人工林として山麓から中腹にかけての谷合い数箇所に植林されており、人工的に移植されたと思われるアカマツ、クロマツ、カラマツなども登山道の周辺や立待岬の一部に生育しているが、いずれも自然分布ではない。●低木層 低木層は林内、林縁に広く分布して森林階層を複雑多岐にし、また高木に乏しい尾根筋や向陽台地にも発展している。その主なるものは、 ハイイヌガヤ、ミヤマビャクシン、バッコヤナギ、イヌコリヤナギ、キツネヤナギ、エゾハシバミ、ヒロハヘビノボラズ、クロモジ、ノリウツギ、エゾアジサイ、エゾスグリ、ノイバラ、ハマナス、クマイチゴ、クロイチゴ、ウラジロイチゴ、エゾイチゴ、ナワシロイチゴ、ホザキナナカマド、エゾノコリンゴ、エゾヤマハギ、エゾユズリハ、リシリタチウルシ、フッキソウ、コマユミ、ミツバウツギ、クロウメモドキ、キブシ、ナニワズ、アキグミ、ナツグミ、ウリノキ、オニウコギ、トゲナシオニウコギ、タラノキ、ヒメアオキ、ハナイカダ、アクシバ、ヒロハハナヒリノキ、シロバナシャクナゲ、エゾヤマツツジ、コメツツジ、ナツハゼ、オオバスノキ、ミヤマホツツジ、ミヤマイボタ、ムラサキシキブ、クサギ、ウグイスカグラ、カンボク、キンギンボク、エゾニワトコ、アラゲガマズミ、ムシカリ、タニウツギ などで、約56種に及んでいる。ササ類はチマキザサ、クマイザサ、チシマザサが主で、千畳敷方面の向陽台地に広く分布し、また、林分の希薄な疎林地帯の林床にも侵入している。北限種と目されるセンダイザサも小範囲ながら生育が確認されている。 ●林床 林床の草本は、早春のヒメイチゲ、エゾエンゴサク、シロバナキクザキイチリンソウ、スミレサイシン、ミヤマスミレ、チゴユリ、マイヅルソウなど、可燐(れん)な花をつける小形のものから、ヨブスマソウ、ペンケイアザミ、オオウバユリ、オオパイラクサなどの大形のものまで多様な種類を含んでいる。特に注目すべきことの一つは、渡島地方から北にはほとんど分布していない本州系が濃厚に存在することで、その主なるものは、 オニヤブソテツ、ハリガネワラビ、オオマムシグサ、ウラシマソウ、ナルコユリ、クマガイソウ、ササバギンラン、エビネ、カナムグラ、イノコズチ、センニンソウ、クサボタン、ヤマシャクヤク、アオツズラフジ、ミヤマキケマン、ハクサンハタザオ、ヤマネコノメソウ、ツルマメ、ヤブガラシ、ヒカゲスミレ、フモトスミレ、ヒヨクソウ、ジャコウソウ、オヤマボクチ
その2は、シダ植物のハナヤスリ科、ウラボシ科、オシダ科、ワラビ科、シシガシラ科、ゼンマイ科、トクサ科に属するものが58種の多きに達し、なお未解決の要素も持っていることである。 その3は、遺伝学上貴重な研究資料とされているエンレイソウ属が種、量ともに豊富に存在することである。エンレイソウ、オオバナエンレイソウ、ムラサキタチアオイ、ミヤマエンレイソウ、コジマエンレイソウなどであり、その変異、種間雑種の有無、その機構など、未解決の問題を含み、今後の検討が期待されているものである。しかし、この属は環境の変化に弱く、樹冠の伐採、泥水の流入などによって容易に滅亡の危険性を持っている。 |
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