函館市の自転車競争事業特別会計については、最近、単年度で黒字となることはあるものの、累積赤字を解消するまでには至らず、毎年のように繰上充用している。
かつての自転車競争事業特別会計は、収益を一般会計へ繰り出し、公共事業等の財源とするなど、函館市にとっても財源確保の手段になっていたが、近年は、残念ながらそういう状況ではなくなった。
しかし、平成20年度から包括委託が導入されたほか、現在の競輪場建設の際の起債償還も平成31年度で終了する予定であることを考えると、経営改善の可能性はまだあると考えられる。
そこで、総務常任委員会としては、収支改善に向けた今後の取り組みを考察するに当たり、他場を調査することとし、この度、北九州市の競輪事業を調査した。
<北九州市の競輪事業>
北九州市の競輪事業において、収支改善に係る収入増の取り組みの特徴的な点として、次の項目が上げられる。
(1) 競輪祭の継続開催(年間4日、売上100億円)
(2) ナイター競輪に特化した開催(年間54日(F1・F2)、売上129億円)
(3) ミッドナイト競輪の開催(年間25日(無観客でインターネット投票)、売上21億円)
(4) 臨時場外発売日数拡大、2場併設の継続(年間474日)
※昼開催分+ナイター開催分
これらにより、売り上げは平成24年度は223億円だったが、平成25年度は250億円となった。
今後の取り組みとしては、場外発売の拡大、ミッドナイト競輪の借上施行へ向けた環境整備が上げられている。
一方、経費縮減については、競輪実施事務の包括委託、投票所・売店・ファンバスなどの整理縮小に取り組み、開催収支の黒字化が図られたとされている。
函館市の状況を考察してみると、
<1 車券の売り上げ増について>
車券の売り上げ増のためには、ファンにとって魅力あるレースの開催や新たなファンの獲得、また車券購入の簡便さなどが求められる。これを踏まえると、次のようなことが考えられる。
(1) 特別競輪等の開催
車券の売り上げ増を考えたときに、まず大幅増が期待できるのが、人気のある選手によるレースの開催ではないか。記念競輪や特別競輪の開催ということになるだろうか。小倉競輪場では、毎年11月に競輪祭が行われており、開催4日間で100億円の売り上げがある。ただし、これは小倉競輪場で開催されるものであ り、他場も同じようにとはならない。函館でも、記念競輪や特別競輪が開催されれば、一定の売り上げが期待はできる。しかし、開催時期などからすると、実際に開催が可能なものは3つ程度であり、これらは他場からの開催希望もあるので、毎年の開催は難しい面はある。
北九州市のように競輪場が全天候型であれば、季節に関係なく自場でレースが可能となるが、建設費も相当なものと考えられ、起債の償還額と売り上げなどから考えると、簡単な話ではな い。ちなみに北九州市の競輪場の建設費は約290億円とのこと(平成26年度の小倉競輪事業の予算規模は279億円)。起債の償還などの負担は財政に与える影響も大きいものと考えられ、例えば平成24年度の単年度収支は、▲632,392千円となっている。
(2) F1・F2競輪で売り上げを伸ばすために開催・発売の競合を避ける
これについては、函館開催のものを他場で発売してもらう際に、他の競輪となるべく競合しないようにする。
(3) ナイター競輪で夜もレースが楽しめ、車券が買える
これは小倉競輪場も実施しているが、函館市も自場開催は全てナイターであり、今のところ競合も少ないので売り上げには貢献していると考えられる。しかし、他場でのナイター競輪が増えると、その効果は薄れてしまうことが懸念される。
(4) インターネット投票の普及で車券購入を便利にする
本場の入場者数が減少しているが、その減少分を補う効果が期待できる。
<2 競輪場でイベント等開催による使用料収入増、入場料の徴収>
競輪の開催以外での収入として、イベント等の会場としての使用による収入が考えられる。しかし、競輪が開催されていない日時における競輪場の有効利用といった程度の使用が実際であり、莫大な収入は期待できるものではない。現行、テレシアターの利用が多いが、自場開催や他場の発売などが行われていれば使用できないため、年間でも50件程度、使用料も十数万円程度である。小倉競輪場でさえも、年間数百万円とのこと。
また、入場料については、 小倉競輪場は一般の入場で100円を徴収している。これはいわゆるホームレスが占拠しないようにといった事情もあるようだ。函館は、法改正を契機に入場料は廃止した経過があり、さらに来場してもらいやすくすることを考えると、徴収することにはならないと思われる。
<3 支出の抑制策の強化>
函館競輪では包括委託が平成20年度から導入されている。従事員の雇用なども、当初は市が雇用していたが、現在は包括委託先の雇用とするなど、委託先の裁量可能部分を増やし、経営努力をしやすくする内容となってきている。
このほか、JKA交付金の率の減などによる効果額もある。
<まとめ>
以上、収支改善のための取り組みについて述べたが、特効薬はなく、物理的な環境なども限られる中で、函館の競輪事業において実際に可能な取り組みをいかに最大限のものとするかということが近道ではないか。
今後も、新たなファンを増やすことも視野に入れて、魅力ある競輪場、レースを追求しなければならない。
そういう意味では、来たくなる競輪場づくりも必要ではないか。北九州市の競輪場では、地元出身の有名選手の展示コーナーがあり、自転車やトロフィー、グッズなどが展示されていたが、来るだけでも楽しい、そしてさらにはちょっと買ってみようかという気になる、そんな競輪場づくりが課題となっているのではないか。
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